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お世話になりました

不動産屋さん、ぼくも何度かお世話になりました。

一番最初に仲介物件を紹介してもらったのは、ぼくがまだ高校を卒業したばかりの頃でした。大学に通うにも、東京までは少々遠いってことで、ぼくは下宿先を探して歩きました。なかなか見つからず、棒になった足を引きずって駆け込んだ不動産屋さんは、大学の最寄りの駅から数えて四つ目の駅にあったお店でした。

「一番安い部屋を、お願いしたいのですが・・」
開口一番、出た言葉がこれでした。これがぼくの物件選びの最重要課題だったのです。ともかく家賃が安い部屋。ぼくの頭にはそれしかありませんでした。

ぼくの家は、実はそれほどカネ持ちというわけではなかったので、ぼくが進学したからといって、仕送りなどしてもらえる経済状態ではなかったのです。
“入学金だけは何とかしてやるから、あとは自分で何とかしろ”っていうのが、親・兄弟を含めての、ぼくの進学の条件でありました。

その街の不動産屋さんは、まだ子どもだったぼくにとても親切でした。学生服姿のぼくを見つめて、
「それなら、いいところがあるよ」
といって、ニッコリ笑っておられました。

そして連れて行かれたのが、その後、ぼくが数年間を過ごしたアパートでした。木造二階のボロボロ、風呂無し、トイレ共同、さらには夏になるとゴキブリがワンサカ。窓を開けておくと飛んでくるんですよ、ゴキブリが。田舎者のぼくはビックリしました。やっぱり都会は怖いとつくづく思いました。

それでも、ぼくにとってはありがたかったのは、家賃がその頃としては非常に安くて済んだ点でした。

後に、高校時代の友人で、同じ大学に進学したヤツがぼくの部屋に遊びにきました。そして、まだ一つ空いていた部屋を借り、ぼくたちはそのボロアパートで、メシを食ったり、ケンカしたり、一緒に風呂に行ったり、たまに酒なども飲んでおりました。

そんなことが出来たのも、このアパートを紹介してくれた、あの街の不動産屋さんのお陰であると感謝に堪えません。不動産屋さん、ありがとう。

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